Success Stories

03
Annamaria Bruni

写真への情熱を
ルポタージュに注ぐ

Greeting to the Sun
Camera:
D800
Lens:
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

ー ニコンフォトコンテスト(NPC)2016-2017の受賞作「Greeting to the Sun」について教えていただけますでしょうか。

エジプトのカイロを訪れた際、イタリアへ帰る前の数日間を友人宅で過ごしました。友人のNadineとNavineは姉妹で、73歳の祖母Madianaと共に暮らしています。Madianaは毎朝、朝食の前にリビングルームへ行き、神に祈りを捧げることから1日をスタートします。初めて彼女がお祈りをする姿を目にした時はカメラを用意していませんでしたが、その光景はとても自然で、優美で、私はその純粋な姿に魅了され、その姿は今でも脳裏に焼き付いています。

翌朝、彼女がいつも通りお祈りをしている時に、窓から美しい光が差し込み、Madianaと彼女のそばで日向ぼっこをしながら眠っていた2匹の猫がまるで絵画のように見えたのです。この時はカメラをすぐに構えることができ、遂に素晴らしい瞬間を写真に収めることができました。

Madianaは毎朝、起きて着替えを済ませたらすぐに、神へ祈りを捧げます。その日々の振る舞いを目の当たりにし、私は心を動かされました。お祈りをする1人の礼拝者という域を超えて、より大きな存在に近づいているように感じられた彼女の儀式は、非常に意義深いものでした。Madianaはそのシンプルで慎ましい振る舞いを通してこの世界に感謝し、それを見た太陽が、まるで意志をもって彼女を選んで照らしているかのようでした。

ー NPC受賞後、何か変化はありましたでしょうか?

自分の作品を世界に向けて発表することができ、大変光栄です。受賞後は、何名かの記者にインタビューをしていただき、フォトジャーナリストとして今後予定しているプロジェクトについて話す機会を得ました。この賞は、写真家としてキャリアを継続していく原動力となっています。作品に注ぎ込んだ愛情と努力がこの素晴らしい成果をもたらし、今後もフォトジャーナリストとしてキャリアを歩んでいく希望を私に与えてくれたのです。

ニコンのデジタル一眼レフカメラのフラッグシップである「D5 100周年記念モデル」を賞品としていただいた喜びは、言うまでもありません。また、賞金はすぐに、フィリピンでの3つのルポタージュ・プロジェクトに充てました。今回賞を受賞したことは、私にとって非常に重要な出来事であり、また予想外の賞をいただき、これまでの人生に味わったことのないような強烈な感情を経験しました。

写真は純粋で正直、そして心から愛せる存在

ー Annamariaさんにとって、写真とはどういうものでしょうか?

写真家としてキャリアをスタートさせて以来、「写真とは “愛すること”」という言葉を心に留めてきました。写真は純粋で正直で、心から愛することのできる存在なのです。私は写真を通じて別の世界に没頭し、創造し、旅をし、感じて、最高の感情を表現しています。

父から熱い写真への情熱を受け継いだおかげで、幼い頃から『National Geographic Magazine』にも触れ、素晴らしい感性を築いてこられたことにも感謝しています。私は人生を通して写真に身を捧げ、写真のために全てを犠牲にし、日々撮影を続けてきました。全てが無駄で、複雑で、困難に感じてしまった時は、自分の写真の中にある強さを見つめることで、人生を諦めないように自分を後押しします。そうすることで写真への情熱を取り戻し、自分の気持ちを表現する機会がある限りは、生きていこうと思えるのです。

私にとって写真は「静寂と音」「光と闇」「平和と戦争」「救出と監禁」「夢と悪夢」そして、私にとっての「安全」であり「確信」です。これらがカメラと一体となった時の純粋な状態に、愛を抱いています。写真は私の人生そのものなのです。

Women of the silk road
機織りを通じて社会的圧力から逃れる女性たちを励ますためのプロジェクト。「このプロジェクトを遂行するにあたり、極度に危険をはらんだ移動から、働く姿を撮影されたくない女性たちの説得まで、多くのハードルを超えなくてはいけませんでした」とAnnamariaさん。また、「時が止まったかのように感じられるこの場所は、アフガニスタンの文化が国の歴史を物語る素晴らしい場所でもありました」と語る。
Camera:
D800
Lens:
AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED
AI AF DC-Nikkor 105mm f/2D
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G.
Occupation: Refugee
2011年に、ヨルダン川西岸地区でスタートしたプロジェクト。難民生活の期間を比較して、彼らの心理と行動の両側面における違いや共通点を捕らえ、さまざまな角度から理解を深めている。本プロジェクトでは、「すぐに母国へ戻りたい」という希望が「永遠に待ち続ける」ということに変化していく過程を観察することによって希望という概念を研究している。
Camera:
D800
Lens:
AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED
Camera:
D800
Lens:
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

ー ほかの代表作と、現在進行中のプロジェクトについても教えていただけますか。

まず挙げられるのは、2014年に、Vento di Terra NGOと共にアフガニスタンにて、生まれて初めて行なった映像プロジェクトです。この映像制作では、女性たちが社会的圧力から解放される場所、シルクスカーフの製造工場へ赴きました。その結果、2015年のNPC映像部門で3位の賞をいただくことができました。代表作であり、最も好きなプロジェクトは、『Occupation: Refugee』です。私は4年間に渡り、中東諸国でパレスチナ人やガザの人々、シリア人、アフガニンスタン人の難民のストーリーを収集し、撮影してきました。

現在進行中のプロジェクトでは、フィリピンをはじめとする発展途上国で「コントラスト」をテーマに撮影しています。マニラに住むトランス・ジェンダーの人々の複雑な生活や、オロンガポで行われている幼き子供たちの売春、そしてマニラの共同墓地で死者と住処を共にする人々の平和を描写しています。

Crying Game
性的暴行を受けた子供たちは重い感情障害に苦しんでおり、他者を信じることや受け入れること、また性的表現に問題を抱えている。被害に遭った少女たちの多くは、自分の存在意義を見つけらないまま再び性奴隷となり、その痛みを麻痺させるためにアルコールやドラッグに依存してしまう。
Camera:
D800
Lens:
Lens: AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
Dead Living – Manila
困難な状況で生き抜くために死者と場所を共有する人々。多くの墓には穴が空き、中は空っぽの状態で、夜は人々の住処として使われている。マニラ市営北部墓地では、100万人を超える死者が埋葬され、同時に市内で最も貧しい数千人もの人々が生活している。
Camera:
D800
The Golden Gays
「フィリピンのようなカトリックの国で、ゲイやレズビアン、トランス・ジェンダーとして生きることは容易ではありません」とAnnamariaさん。この写真に写る高齢の人々は、家族からのサポートを得ることができず、社会からも取り残されている。パフォーマンスをすることは彼らにとって唯一の楽しみであり、食料や寄付を受け取る機会となる。
Camera:
D800
Lens:
Lens: AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G

ー 創立100周年を迎えたニコンにメッセージや要望があればお願いいたします。

幼い頃からニコンは身近な存在でした。これまで常にカメラを携えて旅をし、今では体の一部のような存在で、カメラなしでは生きていけません。

ニコンには、若手写真家たちが取り組む、社会問題をテーマとしたルポタージュに対し、より多くの機会を与えていただきたいと思っています。この世で最も悲劇的な出来事を、正直かつ誠実に伝えようとしている人々に発言の場を与えることは、結果的に、世界中の写真ファンに考える機会を与えることにつながります。

先ほども申し上げました通り、『Greeting to the Sun』はエジプトへの特別な贈り物ですが、同時にニコンへの贈り物でもあります。20年間に及ぶ撮影を通じて、膨大な時間をニコンのカメラと共にし、相当数の写真を撮り、たくさんの努力を重ねてきました。これ以上にニコンの100周年を祝福することはできないほどです。

NPCの受賞を記念して、昨年10月にローマ市内にあるシアター「Teatro Kopo Roma」で個展が開催された。アットホームなスペースで、受賞作『Greeting to the Sun』をはじめとしたAnnamariaさんの作品が展示された。
撮影協力:Teatro Kopo Roma (www.teatrokopo.it)

ー 最後に、今後NPCに参加したいと思っているフォロワーの方々へメッセージをお願いできますでしょうか。

どの写真にも、それぞれの捉え方や解釈が込められていると思います。私たちの心を打つ写真は、多くの場合一見しただけで瞬時に心を奪い、見たことのない光や予期せぬディテールを備えたものです。ひとつの出来事に対し、新しく異なる意義を与えるために、自分自身の想像力をフルに働かせてください。写真家にとって重要なのは、編集に労力を費やすことよりも、想像力を働かせることだと思います。偉大な写真には、壮観で驚きを与えるものばかりではなく、シンプルに考える機会を与えてくれるものも数多く存在します。本当に重要なのは、素早く物事を見抜く力や、撮影をするための準備、そしてそれ以上に、感じるためのオープンな心を持つことですね。

Annamariaさんが現在使用しているニコンカメラとレンズ。
Cameras:
D800
D5 100th Anniversary Edition
Lenses:
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED

Annamaria Bruni

写真好きの父親の影響で、幼い頃から写真に強い関心を抱いてきたAnnamaria Bruni。イタリアのサルデーニャで写真家のアシスタントとして働いたことをきっかけに、この分野での一歩を踏み出し、その後ミラノでファッション写真を修学。2000年から2003年にかけてはロンドンに拠点を移し、数社のモデル・エージェンシーで働く。同時期に、女性のポートレートを専門に撮り始め、その時の情熱が現在の活動へと繋がっている。2004年、エジプトを旅行したことをきっかけに中東に魅了される。その後、いくつかのNGOと共にヨルダン川西岸地区、ガザ、レバノン、ヨルダン、トルコ、アフガニスタン、そしてタイを訪れ、長年に渡って撮影を重ねてきた。

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