Success Stories

01
Dorte Verner

世界の危機的状況を写し出し世に伝える

Disappearing fishing method by Moken(消えゆくモーケン族の漁)
Camera:
D810
Lens:
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

ー ニコンフォトコンテスト(NPC)2016-2017の応募者が選ぶグランプリ受賞作「Disappearing fishing method by Moken」(消えゆくモーケン族の漁)について教えていただけますでしょうか。

これはミャンマーのメルグイ諸島の先住民族、モーケン族の写真です。世界中に住む多くの先住民族は、古代より引き継がれた昔ながらの文化や知識、技法を持っています。先住民族が消滅するとしたら、それらもこの世の中からなくなってしまうほどの貴重なものですが、生活のすべてを天然資源に頼っているモーケン族は、気候変動などの影響により消滅危機に瀕しています。彼らは伝統的な漁業技術を持っており、漁業をしながら遊牧しています。小型木製ボートからジャンプして長い槍で突く漁法もその1つで、受賞作品はまさにその瞬間の様子です。

人口は1,000人に過ぎず、近年男性はタイの漁船に出稼ぎに行き、いずれ絶えるのではないかと危惧されています。しかし彼らは世界中に訴えかけるツールを持ちあわせておらず、ニュースとして取り上げられることもありません。私が写真におさめることで、1人でも多くの人々にその存在や存続の危機を知っていただければと思い、NPCで発表させていただきました。

ー NPC受賞後、何か変化はありましたでしょうか?

大きな変化としては、受賞により世界中の何千人もの方々にモーケン族のことを知っていただけたことです。私がわざわざ遠くまで足を運んで取り組んでいることに価値があると、改めて気づかせてくれました。ニコンはそのすぐれた機材を通して、私に世の中や社会から忘れ去られ、決してニュースにならないような人々を写真に残すことを、また、彼らの存在を世に知らせることを可能にしてくださいました。

NPC受賞後の現在、主に3つの主要なプロジェクトの準備をしているところです。1つは、「ワンダーピープル(驚異の人々)」と呼ばれる世界的な難民危機についてです。家族、家、生活を失うなどさまざまな困難に直面しているにも関わらず、これらのワンダーピープルは希望を捨てずに、困難に立ち向かっています。私はこれまで20ヵ国以上で撮影した難民の写真をまとめ、2017年にワシントンD.C.で大きな展覧会を開く準備をしています。そこで展示する写真は、人々がこれまでほとんど目にすることがなかったような珍しい難民の姿を写し出したものです。

2つ目は気候変動などの環境や社会問題を追う内容、そして3つ目は先住民族の人々やその生活様式、例えば西アフリカのサヘル地域の遊牧民族のウォダービ族を写真に記録し、人々に紹介する内容です。

Wodaabe men preparing for the ceremony
近年干ばつで危機的状況にあるウォダービ族(2017年9-10月撮影)。「これは今年の雨季の恵に感謝するセレモニーです。女性が男性を彼氏や夫として選ぶため、男性はきれいに化粧をしています。皆さん本当に思いやりのある親切な方々です」とDorteさんは振り返る。
Camera:
D850
Lenses:
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

写真とは何らかの変化を見た人に与えられるもの

Syrian and Afghan refugee children
ヨルダン、レスボス島、ギリシャで撮影したシリア人難民の子ども(2016年6月、7月撮影)。「世界中の難民数は6,600万人で、その多くは子どもと若者です。平均10年もの間、自国から離れた生活を強いられているのです」とDorteさん。
Camera:
D810
Lens:
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

ー Dorteさんにとって、写真とはどういうものでしょうか?

人々の記録写真は私の情熱そのものです。それは、これらの声なき人々に声を与える機会を私に与えてくれるものです。写真は、何らかの変化を見た方におこすことができるものだと思いますので、決定的な瞬間をとらえ何かしらの印象を残す、そんな写真を撮りたいです。強いイメージの写真は大切なメッセージを表現し、人々に訴えかけます。私も人の子、他人を思いやる心を持ち、人々と交流するのが大好きな写真家だと自負しています。人々との交流を通して、大切なメッセージを世に訴えたいという情熱を実現化してくれるのが私にとっての写真なのです。

ー ほかの代表作についても教えていただけますか。

私が撮影する被写体は難民、先住民、遊牧民など経済的に脆弱な人々です。私がもっとも誇りに思っている代表作は、シリーズ化されている「Refugee Children Caught in the Global Refugee Crisis(世界の難民危機に瀕した難民の子どもたち)」というタイトルの作品です。難民の多くは子どもや若者で、難民キャンプでは教育の場や栄養のある食物が不足しています。ほかの代表作は、ウォダービ族を撮影した「Wodaabe men preparing for the ceremony(儀式の準備をしているウォダービ族の男たち)」です。ウォダービ族も気候変動の影響を受け、伝統的なライフスタイルの存続が大変厳しい状況にあります。近年干ばつが続いたことなどが影響し、十分な牧草や水の確保ができず、多くの牛を失ってしまいました。

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Dorteさんが撮影したウガンダの難民母子(上)、ケニア、ウガンダ、ニジェールの難民たち(下)。これらはすべてワシントンD.C.の世界銀行に展示されている。

腕をあげるために
今後も撮影し続けることが大切

ー 創立100周年を迎えたニコンにメッセージや要望があればお願いいたします。

この100年で成し遂げたニコンとそのテクノロジーの進歩に大変感謝しており、カメラを使うたびにその恩恵を受けていると感じます。今後もどうかテクノロジーを進化し続けてください。要望としては、私が持っているニッコールレンズを使えるような、赤外線写真撮影ができるミラーレス・カメラを開発していただければ大変うれしいです。

ー 最後に、今後NPCに参加したいと思っているフォロワーの方々へメッセージをお願いできますでしょうか。

すべての写真家へのメッセージとしては、写真を撮り続けてくださいということと、撮影する内容について理解を深めるために勉強してくださいということです。そのためにもNPCにぜひ参加してみてください。がんばって撮影を続ければさらに腕が上がり、またとない奇跡の瞬間をとらえる準備ができることでしょう。機会損失ほどもったいないものはありません。チャンスが目の前に訪れたのに撮影をしなければ、あとあと後悔が残るでしょう。しかし、撮影したモーメント(瞬間)について後悔することは決してありません。

Dorteさんが現在使用しているニコンカメラとレンズ。
Cameras:
D850
D810
D800
Lenses:
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED
AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G
AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D
Speedlights:
Speedlight SB-910
Speedlight SB-700
Teleconverter:
AF-S Teleconverter TC-14E III

Dorte Verner

デンマーク出身、アメリカ・ワシントンD.C.在住。イタリア・フィレンツェのヨーロピアン・ユニバーシティ・インスティテュートで経済学を専攻し、博士号を取得。フランス・パリにあるOECD(経済協力開発機構)勤務を経て、1995年よりワシントンD.C.の世界銀行に勤務し、世界中の貧困削減のために尽力。独学で覚えた撮影および、ソーシャル・サイエンティスト(社会科学者)のスキルを通し、社会的弱者である発展途上国の人々の紹介や支援に尽力している。

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